神力寺

お盆の由来2016.8.01

目連

お盆の由来

(新・7月13日~16日、月遅れ・8月13日~16日)

 7月13日から16日まで、8月13日から16日まで、それに旧暦の7月13日から16日までと、地方によってちがいがありますが、仏教の大切な行事の一つであります。正しくは、盂蘭盆(うらぼん)といいまして、もとは梵語のウランバナの音写であります。その意味は「倒さに懸けられた苦しみ」(倒懸(けんとう)と訳します)ということであります。
「仏説盂蘭盆経」によりますと、お釈迦さま十大弟子のお一人に神通第一といわれた目連(もくれん)尊者という方がおられました。ある時尊者は今は亡きお母さんのことが心配になって、霊界に思いをはせてみました。するとどうでしょう、尊者の心配どうり、お母さんは地獄の底で苦しんでおられるのです。お母さんは一匹の餓鬼になっておりました。いくら食べても腹がへり、いくら飲んでも喉がかわきます。おまけに、尊者がおくりとどける食べ物はすべて石になり、飲みものは火となってしまいます。こればかりは尊者の神通力をしてもどうにもなりません。困りはてた尊者はお釈迦さまのところへ行って尋ねました。
「母はやさしい人でしたのに、どうして地獄にいるのでしょうか?・・・」
「それは自分の子に対してだけで、他の人のこととなるとまるで逆だったね」
尊者は、自分にはやさしかった半面、他の人にきびしかった母の一面を思い出しておりました。そして、
「なんとかして救ってあげられないものでしょうか?」と問うたところ、お釈迦さまはこのようにお答えになられました。
「まず自分の母一人を救いたい、自分の母にだけ救いがとどけという、その心をすてなさい。その上で、夏の修行(夏(げ)安(あん)居(ご)といい、雨期の間 屋内で修行すること)あけの仲間の僧侶に供養しなさい。そうすれば、みんなと一緒に救われるでしょう」
こうして目連尊者のお母さんは地獄の苦しみから救われたのでありますが、第2、第3の目連のお母さんを出さないために、もし出たら救ってあげるために行った「供養会」、これがお盆であります。
時うつり、時代はかわりました。しかし目連尊者のお母さんと同じような例はあとをたちません。この法会を通じて、「みんな一緒に救われる」こころを育てて参りたいものです。
お盆の行事は土地の風習が沢山加味されております。このことも尊いことでありますので略すことなく守ってゆきたいものであります。
尚、迎え火、送り火は日本の習慣でありますが、13日の夜玄関さき(本当は自分の家のお墓の前)でオガラを焚き、その火をローソクにうけてお仏壇にともし、15日の夜送り火をたくときの火種にする形式は、各地共通しております。またお精霊棚の供物をおたきあげすることからはじまったといわれる京都大文字のおくり火は有名であります。
『仏事のこころえ』菅野啓淳著抜粋